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クリスタプスポルジンギスってどんな選手?生い立ちや性格

      2016/06/18

クリスタプスポルジンギス

 

今、世界中のNBAファンの熱い視線を浴びている一人の若者がいる。その名は、クリスタプスポルジンギス(Kristaps Porzingis)通称「KP」。今シーズンニューヨークニックスから全体4位指名を受けたルーキーで、ラトビア出身の20歳だ。
 
 




 
 

ドラフトまでの軌跡

ポルジンギスをニックスがドラフト4位で指名したのは2015ドラフトだが、実はポルジンギスは1年前から注目を浴びていた。

 

6歳からバスケットボールを始めたポルジンギスは、15歳の時にセビージャ(スペインリーグ)のトライアウトを受け、ユースチームに入団。当時203cmで71kg。すぐさまユースチームで活躍を見せると、17歳にしてプロチーム契約を結んだ。セビージャでのルーキーシーズンは平均僅か7分弱の出場で、2.0点1.0リバウンドという成績に終わった。2年目を迎えた’13-’14シーズンで、ポルジンギスは才能の片鱗を見せ始める。シーズンを通して見ると成績は15分の出場で6.7点2.8リバウンド0.9ブロックであるが、要所要所で活躍を見せシーズン終了後にはAll-ACB Best Young Players Team(22歳以下の若手のみが対象で、選出には平均10分以上の出場が必須)に選出された。

 

そのシーズンの活躍がNBAスカウトの目に止まった。ポルジンギス自身が「まだ自分にはその資格が無い」とNBAドラフトへのエントリーを避けたが、12位指名権を持っていたオーランドマジックを筆頭に興味を示していたし、OKCサンダーは「もしも残っていれば21位指名でポルジンギスを指名する」と殆ど公言していた。当時からそのポテンシャルの高さを認められていたポルジンギスであったが、去年のドラフト時点ではトップ15指名候補のうちの一人でしかなかった。

 

セビージャでの3年目のシーズン、平均21分の出場で11.0点4.6リバウンド1.4ブロックと、さらなる成長を見せたポルジンギスは大方の予想通りNBAドラフトにエントリー。未知数な部分の大きかったポルジンギスだが、各チームのワークアウトを経る度にその評価はうなぎのぼり。一時期は全体2位でロサンゼルスレイカーズが指名する可能性があるとまで言われた。結局1位はウルブスがカールアンソニータウンズ、2位はレイカーズがディアンジェロラッセル、3位はシクサーズがジャーリルオカフォーを指名したことで、4位指名権を持つニックスがポルジンギスを指名することとなった。

 

ドラフト後のNYの反応、悪夢の再現?

ニックスは明らかに低迷期を迎えていた。’12-’13シーズンにベテラン勢と若手が上手く噛み合いカンファレンス2位の54勝をあげたが、’01-’02シーズン以降ニックスはプレーオフ出場が4度のみ。1回戦を勝ち抜いたのは直近14シーズンでたったの1度と、資金力のある大都市チームに関わらず補強が上手くいかずにいた。そして昨シーズン、チームはついにフランチャイズレコードのシーズン65敗を記録した。

 

そんなチーム状況であった為、ニューヨークのファンが求めるのは即戦力のルーキーだった。その場しのぎの補強の為にドラフト指名権をトレードで放出してきたフロントのせいで、チームが低迷しているにも関わらずロッタリーピックを出来ずにいた中で久々に掴んだドラフト全体4位指名というビッグチャンス。因みにニックスが4位以上のドラフト指名をした選手を他にご存知だろうか?1985年のNBAドラフトで全体1位指名をしたあの有名なパトリックユーイングだ。それ以来の上位指名権を得たということで、ニューヨークは完全に沸いていた。

 

ニックスの伝説的存在であるパトリックユーイング以来の上位指名選手として期待を膨らましていたファンが望んだのは、少なくともポルジンギスでは無かった。ポルジンギスのポテンシャルは誰もが認めるところがあったが、チームの絶対的エースであるカーメロアンソニーはもう先が長くない選手であるし、ニューヨーカーはせっかちである為に選手の成長過程を悠長に見守ってくれるような環境ではない。そんな中でニックスがポルジンギスを指名した時、ドラフト会場であるニューヨークのマディソンスクエアガーデンには大ブーイングが鳴り響いた。

ポルジンギス ブーイング

ポルジンギス ブーイング

 

これが実際にポルジンギスが指名された瞬間の会場の様子である。子供が頭を抱え泣いている。

 

 

「ポテンシャルが高く、外があって器用」というヨーロピアンビッグマンのジンクス

ノビツキーがNBAで大成功を収めたことがきっかけで、過去にも過剰な期待をされたヨーロピアンビッグマンが多く存在していた。代表格は、ダルコミリチッチ。最近NBAを見始めた人はそのプレーを見たことが無くても、その名前は聞いたことならあるはずだ。なぜなら、ミリチッチはポテンシャル高い系の使えないヨーロピアンビッグマンの代名詞のような存在であるからだ。

 

2006NBAドラフトのアンドレアバルニャーニ

ただ使えないだけなら他にもアンドレアバルニャーニなども同類と思われるかもしれないが、少なくともバルニャーニはシーズン平均で20点以上を記録したこともあるし、ラプターズでチームを引っ張っていた時期もあった。それにバルニャーニが1位指名を受けたドラフトは不作の年であった為、そこまでの失敗感は無い。

NBAドラフト2006

今でも第一線で活躍しているのは2位のラマーカスオルドリッジと8位のルディゲイくらいだ。どちらもNBAで長いこと活躍はしているが、オールスターの常連でも無ければそこまで人気がある訳でもない。これならまだ許せる。

 

2003NBAドラフトのダルコミリチッチ

しかし、ミリチッチがドラフト全体2位指名を受けた時の2003年ドラフトは、かつてないほどの豊作ドラフトであった。

NBAドラフト2003

6位以下はそうでもない(と言うか、消えている選手が殆ど)が、1位レブロン、3位カーメロ、4位ボッシュ、5位ウェイドに挟まれて、ミリチッチが2位指名を受けている。

 

ダルコミリチッチのスタッツ

こちらは、ミリチッチがNBAで残した成績である。ただの一度も二桁得点を記録していないし、万能型と言われたそのプレースタイルはただの器用貧乏な左利きの人だった。

 

 

ヨーロピアンの選手は失敗ばかりなのかと言うとそうではない。最近でもヨナスバランチュニス、エネスカンター、ダニロガリナリ、ニコラブチェビッチ、マーチンゴータットら、チームにとって欠かせない存在となっている選手たちもいる。そもそも彼らは過度な期待をされて入団したわけでもなく、順当に実力を評価されたに過ぎない。

一方で、ミリチッチやバルニャーニ、ツキティシュビリのようなアウトサイドシュートもあって、大きい割に動きが素早くて、ドリブルがつけて、パスも出せる起用なビッグマンというタレコミは、どこか危険な臭いを感じてしまうのだ。そしてその条件に当てはまるのがポルジンギスにほかならなかった。

 

 

ポルジンギスのNBA適正の高さ

ドラフト時のポルジンギスは、明らかに線が細くてNBAの当たりに対応出来る体ではなかった。それもそのはず、221センチまで成長していたポルジンギスのドラフト当時の体重は、僅か104キロだった。ビッグマンの中では細いイメージのあるパウガソルですら109キロ。104キロと言うと先ほど出てきたルディゲイと全く同じ体重になる。これではガチムチな選手の多いNBAでやっていくのは難しいのは誰の目にも明らかだった。

 

シーズン開幕までに体重を増やす必要があるとと判断したニックスとポルジンギスは、1日に5,000Kcalを摂取。それを筋肉に変えるため、1日に2回のウェイトリフティングを行った。その努力が実り、プレシーズン開幕時には109キロまで体重を増やし、ガッチリとした上半身を見せつけた。

 

ヨーロピアンビッグマンが失敗する大きな要因の一つとして、環境に適応出来なかったという例が多い。英語(コミュニケーション)や過密スケジュール、バスケットに取り組む姿勢などが代表的な例だが、ポルジンギスに関してはその心配は不要だった。昔からNBAでのプレーを夢見ていたということもあり、ポルジンギスはほとんど完璧な英語を話す。プロリーグでのプレー経験がある為、NBAの過密スケジュールにも適応出来る。また向上心が高く、練習が終わってもジムから出ようとしない。フィルジャクソンやデレックフィッシャー、カーメロアンソニーなどチームメイトを呆れさせるほどのジムラットである。このような適正を入団時から持つヨーロピアンはかなり珍しい。そして同じヨーロピアンプレイヤーでニックスの選手であるホゼカルデロンとサーシャブヤチッチの存在は大きかった。

 

そんなポルジンジスのバスケットへのひたむきな姿や向上心の高さがメディアを通してニックスファンの耳にも入るようになり、「あれ、これはイケるのか?」「今までの奴らとは違いそうだぞ?」という雰囲気がプレシーズン開幕を前にしてニューヨークには流れていた。

 

 

プレシーズンでのプレー、そしてシーズンが開幕

ポルジンギスのブロック

プレシーズンが開幕するや否や、その評価が変わっていく。ヒョロヒョロしていてソフトなイメージを抱いていたポルジンギスのプレーは、思いもよらずハードでガッツ溢れるものであった。長身を活かしたブロックショットをはじめとしたディフェンスやリバウンドも大方の予想よりも素晴らしく、その時点で既にチームに大きな影響力を持つ選手であった。「2、3年は使い物にならない」ことも覚悟していたファンからすると、嬉しいサプライズだった。

 

長期的に大事に育てる選手でありまだ20歳になりたてであるため、「怪我や疲労の蓄積を考慮した出場時間になる」と事前に公言していたニックスだが、蓋を開けてみるとポルジンギスのチームへの貢献度はカーメロアンソニーに次ぐ。実際にカーメロが欠場した試合でチームのオフェンスを引っ張るのはポルジンギスとアーロンアフラロだ。新加入センターのロビンロペスがいまいちチームにフィットせず、ポルジンギスを長時間出さざるを得ない試合も多くなっている。

 

平均出場時間27分(チーム3位)、13.2点(チーム2位)、8.0リバウンド(チーム1位)、0.7スティール(チーム4位)、2.0ブロック(チーム1位)と、大車輪の活躍。シーズン開幕当初なかなか決まらなかったシュートも徐々に決まりだし、FG%42.2、3PT33%、FT86.1%まで上げてきた。

 

成績もそうだが、それ以上にニューヨーカーの心を掴んだのはやはりその堂々たるプレーっぷり。ポルジンギス本人も「ニューヨークでプレーするというプレッシャーを楽しみたい」と公言していたし、シーズン開幕数試合で既にポルジンギスはファンのフェイバリットな選手になっていた。ベンチに座ると「Porzingis!Porzingis!」のコールが鳴り響き。コートに立つとオフェンスリバウンドのプットバックダンクや、豪快なブロックショット、スリーポイントシュートなどでチームと会場を盛り上げる。まだまだムラがあり、毎試合活躍とまではいかないが、少なくともハードにプレーをするポルジンギスにブーイングが浴びせられることは一切無くなった。

 

NBAショップからはポルジンギスのレプリカユニフォームがニューヨーク中のショップやネット通販から売り切れた。先日発表されたオールスター人気投票の中間発表でもポルジンギスは、イースタンカンファレンスのフロントコート部門で8位の得票数であった。ルーキーで唯一の部門別トップ10入りをしており、ニックスファン以外にもそのプレーが認められてきていることを証明した。

 

2016年NBAオールスター中間発表!全体1位は誰?

 

レギュラーシーズンも30試合を経過したが、いまだにポルジンギスのプレーは見ていてワクワクするし、毎試合新たな引き出しを見せてくれる。今シーズンのルーキーは順当に1位のカールアンソニータウンズと3位のジャーリルオカフォーがルーキーオブザイヤー候補筆頭だ。それでも4位以下の指名でポルジンギスよりも活躍を見せている選手は居ないため、今の時点ではニックスはドラフトで最高の選択をしたことになる。ドラフトの日、ポルジンギスにブーイングを浴びせたニックスファンは今の状況をどのような顔で眺めているのだろうか。恐らく、手のひらを返し「Porzingis!Porzingis!」と叫んでいるであろう。それが、実力成果主義のニューヨーカーだから。

 

 - NBAニュース, New York Knicks